毎日の生活が苦しいと感じる原因は家計の収支バランスが崩れているからです。その場合は家計簿診断でネックとなっている原因を見つけることが出来ます。そこでこの記事ではひとりでできる家計簿診断を紹介します。
家計簿診断は自分ひとりで出来ます
家計診断(家計簿診断)となればひとりではとても無理、ファイナンシャルプランナーなどのプロに相談して診断してもらうしかないと考えるひとが多いと思います。でも、ご安心ください。
いくつかのポイントをチェックしていけば自分ひとりで家計の診断は十分に可能です。しかも、家計簿をつけていなくてもOKです。
自分ひとりでする家計簿診断の流れ
まずはじめに、自分ひとりでできる家計簿診断の流れを紹介していきます。これは家計簿診断の大筋の流れを理解する重要なポイントです。家計簿診断フローは、次の5つの重要なステップごとに調査していきます。
<家計簿診断フロー:5つのステップ>
① 我が家の年間収入を計算する
② 我が家の理想の年間預金額を見積もる
③ 我が家の実際の年間預金額を計算する
④ 必ずかかる年間の支出を計算する
⑤ 必ずかかる年間支出以外の支出分を計算する
この家計簿診断フローに沿って5つのステップを調査していけば、今まで分からなかった家計の問題点が浮き彫りになります。また、どうも面倒だと感じた人は、基本ステップの①~③までのステップだけでも大丈夫です。
詳しい家計簿診断の説明は次の項で説明していきますので、是非やってただければと思います。
実際にやってみる我が家の家計簿診断
家計は、「収入」「支出」「貯蓄」の三本柱で成り立っています。この中の収入を基本として、支出と貯蓄のバランスが取れていることが理想です。5つのステップの家計診断を通じて家計の実態を分析していきましょう。
【1】我が家の年間収入を計算する
自分の家の年間収入を計算しましょう。独身の場合は自分ひとりの仕事の収入だけでよいですが、既婚者の場合は夫婦の収入の合計になります。具体的には次のような明細になります。
<年間収入の内訳>
- 給料(夫)
- 給料(妻)
- 年金
- 手当(児童手当等)
- その他(お祝い金など)
収入の項目は上記のようになります。この年間収入を計算するうえでは、細かい家計簿レベル情報は必要ありません。給料の年間合計は源泉徴収で正確に把握できます。給与口座を見て計算することもできます。
それでは具体的にAさんの家の年間収入の内訳をみてみましょう。Aさんは35歳のサラリーマンで既婚者です。
<Aさんの家(家族4人)の年間収入>
夫(Aさん)___ 年間455万円
妻 ___ 年間25万円
手当 ___ 年間20万円
その他 ___ 年間4万円
Aさんの家の年間収入 ( 504万円 )
年間収入を把握するための期間は、必ずしも会計年度(4月~翌年の3月)でなくても、1月~12月の期間でも構いません。1年間であるならば自分のデータの取りやすい方でいいと思います。
【2】我が家の理想の年間貯蓄額を見積もる
生活にあまり負担にならない理想の貯蓄は年収の10%~20%と言われています。また、年収は高くなればなるほど預金に対する負担はなくなります。ここでは平均をとって貯蓄を年収の15%で計算してみましょう。
Aさんの家の例でいうと年収504万円の15%で、理想の年間貯蓄額は、75万6千円となります。ここから月単位の貯蓄額を計算すると月で6万3千円の貯蓄額が理想となります。
<理想の年間貯蓄額の計算>
年間預金額 =「我が家の年収」 × 0.15
月別預金額 =「年間預金額」÷ 12
<Aさん理想の年間貯蓄額>
年間貯蓄額: 5,040,000 × 0.15 = 756,000
月別貯蓄額: 756,000 ÷ 12 = 63,000
【3】我が家の実際の年間貯蓄額を計算する
現在の預金残高を確認するのは、現在もっている口座の通帳残高をみれば簡単に分かりますが、年間の貯蓄額はすぐには分かりません。
しかし、ある方法で年間の貯蓄額を計算することができます。必要なものは、家計で使用している全ての通帳です。これら全て通帳のある年度の3月末の通用残高と、翌年の3月末の通帳残高をメモしておきます。
定期預金があればそれも書き出しておきましょう。そして書き出したメモをもとに次の計算式に当てはめて年間貯蓄額を計算していきましょう。
《過去1年間の貯蓄額》
過去1年分の貯蓄額 = 翌年度3月末の通帳残高 - ある年度の3月末の貯蓄残高
になります。例えばAさんの例で説明すると書きのようになります。
<Aさんの年間貯蓄額の計算>、
B銀行のある年度の3月末の残高___100,000円
C銀行のある年度の3月末の残高_____80,000円
D銀行のある年度の3月末の残高___450,000円
定期預金のある年度の3月末残高___1,000,000円
合計金額_____163万円
そして
B銀行の翌年度の3月末の残高___130,000円
C銀行の翌年度の3月末の残高_____100,000円
D銀行の翌年度の3月末の残高___500,000円
定期預金の翌年度の3月末残高___1,100,000円
合計金額_____183万円
Aさんの過去1年の貯蓄額: 183万円 - 163万円 = 20万円
《実際の過去1年の貯蓄額の年収に対する割合を計算してみる》
過去1年の貯蓄額 ÷ 過去1年の年収=年収に占める割合
( 20万円 )÷(504万円)=年収に占める割合( 4% )
Aさんの貯蓄割合の例だと4%ということで、理想の貯蓄の年収の10%~20%から大きく下回っていて、生活費にほとんど消費されてお金を貯蓄に回せていない現状が伺われます。
【4】必ずかかる年間の支出(固定費)を計算する
毎月必ず支払いが発生する支出(固定費)の支出を計算しましょう。固定費はほとんどが月単位で発生する支出ですが、車の税金のように1年単位のものもあれば、車検のように2年に一度のものもあります。
<固定費の種類>
- ・電気料金
- ・ガス料金
- ・水道料金
- ・携帯電話料金
- ・固定電話料金
- ・インターネット料金
- ・生命保険料
- ・車のローン
- ・車保険代
- ・各種税金
- ・住宅ローン(家賃)
- ・管理費
- ・小遣い(夫、妻、子供)
- ・教育費(幼稚園、小学校など)
- ・習い事
他にも月額のアプリの利用料金や各種のサポート費用なども固定費に入ります。各家庭で異なるので一度全部洗い出して固定費の総額を計算してみましょう。集計するとAさんの家では、月の固定費が19万円でした。
そして年払いの固定費の分も含めると年間では250万円になりました。
【5】 必ずかかる年間支出以外の支出分(変動費)を計算する
最期に固定費以外にかかる生活費(変動費)の計算をしてみましょう。家計簿をつけている人は、変動費の項目の金額を合計して変動費を算出します。変動費はおおよそ次のような項目になります。
<変動費の例>
- 食費 (食材やお酒、お米など外食を除く食事に関わる支出)
- 日用品費 (石鹸や洗剤など日常的にかかる支出)
- ガソリン代(車のガソリン費用)
- 医療費 (病気治療や薬などの費用)
- 娯楽費 (雑費、外食費等)
- その他 (その他諸々の費用)
家計簿をつけている人は、上記の項目に関連しているものを抜き出して変動費を集計して合計金額を算出します。家計簿をつけていない人は、少し大雑把になりますが次のような方法で変動費を算出できます。
まず、変動費の総額を計算で算出します。これをAさんの例をとって説明しましょう。Aさんの家計でこれまでに分かっていることは、次のようになります。
- Aさんの家の年間収入 ( 504万円 )
- Aさんの家の過去1年の貯蓄額 ( 20万円 )
- Aさんの家の過去1年の固定費 ( 250万円 )
これまでの情報から分かっている過去1年の年間収入と貯蓄がと固定費をもとに次の計算式で過去1年の変動費を算出できます。但し、通帳残高を元にしているので、タンス預金がないことが前提です。
(年間収入)ー (年間貯蓄額)ー (年間固定費)= (年間変動費)
( 504万円)ー ( 20万円 )ー ( 250万円 )= ( 234万円 )
- Aさんの家の過去1年の変動費 ( 234万円 )
- Aさんの月単位の変動費 234万 ÷ 12 = 19万5千円
次に変動費の内訳を調べます。まずだいたいの金額が頭で分かっている変動費の項目から分かる限りの項目を上げていきます。例えば把握している変動費が次の項目だったとします。
<ほぼ分かっている月単位の変動費>
医療費→1万5千円
ガソリン→2万円
日用品など→1万円
合計( 4万5千円 )
そして月単位の変動費から「ほぼ分かっている月単位の変動費」を引くと、明細がわからない変動費の金額が判明します。この内訳は食費を含むその他となりますが、ここでは「食費など」とします。
(月単位の変動費)ー (ほぼ分かっている月単位の変動費)= (食費など )
( 19万5千円 )ー ( 4万5千円 )= (15万円)
以上のようになります。ここでこれまで分かったAさんの年間の家計の状況をまとめてみましょう。
- Aさんの家の年間収入 ( 504万円 )
- Aさんの家の過去1年の貯蓄額 ( 20万円 )
- Aさんの家の過去1年の固定費 ( 250万円 )
- Aさんの家の過去1年の変動費 ( 234万円 )
{ 分かっている変動費/医療費、ガソリン、日用品 (54万円)}
{ 明細がよく分からない変動費/食費etc (180万円)}
家計簿診断で我が家の家計を見直そう
ここまでは家計簿診断の手順をAさんの例を参考に紹介してきました。ここからはここまでの家計データをもとに家計を見直す方法をAさんを例にして考えていきましょう。
具体的な方法としては、家計の中でどこに無駄な支出が発生しているのかを分析して節約を効率的におこなって、理想的な貯蓄ができる家計になるようにを見直していきます。
家計の見直しの基本は、支出の中でどの部分を節約すれば、最も効果的な支出削減になるか見極めることです。そのためには、まず支出をどうしても必要な支出とそれ以外に分けて考えて見ることです。
どうしても必要な支出とは、生活するために最低必要な支出です。これを具体的に言うと、それは「住居に関わる支出」と「食費と日用品とわずかな小遣い」くらいです。
<生活するために最低必要な支出>
- 住宅ローン
- 家賃
- 管理費
- 電気
- ガス
- 水道
- 固定資産税
これらの支出は固定費でどうしても必要な費用です。もちろん水道光熱費は節約することが出来ますが、労力の割に節約金額は微々たるものなので大きな節約効果は望めません。
そして実際に劇的な節約効果を期待できるのが「生活するうえでどうしても必要な費用」以外の支出です。これは言わばオプションであり、必ずしも必要とはならないので、やり方次第で劇的な節約が望めます。
<生きるうえでのオプション的な支出:変動費>
- 生命保険
- テレビ
- パソコン、タブレット
- スマホ(携帯電話)
- 駐車場
- 車、バイク
- パチンコ、レジャー、ホビー
これらの項目は、人生のオプション支出ですので夫々の項目を見直して、削除するか、金額を最低限に抑えるべきです。これらの支出をいかに削減できるかが家計見直しのキーになります。
まず、真剣に苦しい生活から脱したい、節約して貯蓄に回したいと考えるなら、パチンコなどの娯楽にかける支出は徹底的に削減すべきでしょう。テレビやパソコン、タブレットなどなくても困りません。
なぜなら、今はテレビやパソコンがなくても、スマホさえあればネットからあらゆる情報にアクセスできるからです。そのスマホもアイフォンから格安スマホに変更すれば劇的に通信料が安くなります。
車も普通車から中古の軽自動車に載り変えれば、ガソリン代も車検費用も自動車税も劇的に安くなります。生命保険も見直しすることで大きな支出削減が見込めます。ざっくりですがシミュレーションしてみましょう。
<家族4人でのオプション的支出の削減シミュレーション>
・生命保険(大手の保険からネット保険へ) ー>月1,2000円の削減
・テレビ (テレビ廃止でNHKとBS料金) ー>月 3,500円の削減
・パソコン、タブレット(廃止でWiFi料金) ー>月 5,000円の削減
・スマホ家族4人分(格安スマホへ) ー>月16,000円の削減
・車を普通車から軽へ×2台(維持費) ー>月20,000円の削減
・パチンコ、レジャー、ホビー費用削減 ー>月20,000円の削減
削減合計(月76,500円の削減)
このシミュレーションはAさんのような家族4人の一般的家庭を想定してざっくりと計算したものです。実際は個々の家庭によって多少は変わってくると思いますが、傾向をみるには十分なデータだと思います。
月額の節約金額は、7万6千500円にもなります。これを年で計算すると91万8千円にもなります。そして91万8千円はそのまま貯蓄に回すことができるのです。この削減がAさんの家庭でおこなわれたならどうなるでしょう。
Aさんの家の年収は504万円で年間貯蓄額は20万円、貯蓄率は4%です。そしてもし年間貯金額が91万8千円になったら、貯蓄率はなんと18%にもなります。これはまさに理想の貯蓄率です。
このように必ずしも必要ではないオプション的支出にターゲットを絞って、大規模な見直しをすることで大きなな節約が可能になります。
家計簿診断(保険の見直し)で支出を大幅削減する
家計簿診断で支出の見直しをする時に絶対に対象になる項目の一つに生命保険の見直しがあります。生命保険の毎月の支払額はばかになりません。生命保険料の世帯平均は月額3万5千円(年額41万6千円)です。
生命保険料は家計の大きな負担になっているのです。また、もう一つの問題として生命保険の内容をよく把握していないという現状があります。多くの人は若い特に高額エリアの総合保障タイプの保険に入りがちです。
そしてそのまま継続更新で中高年になるのがよくあるパターンです。しかし、年齢や医療の状況によって、求められる保険の内容も変わりつづけています。また、最近では割安なネット保険もたくさんあります。
しかし保険の見直しにはある程度の知識がないと難しいものです。ですから良くわからないと思う人は、保険の窓口のような専門の相談所を利用して、割安で自分の希望にあう保障を紹介してもらうのがベストです。
まとめ
現代はなかなか収入を増やすのは難しい時代です。しかも、少子高齢化社会で老後の年金にも大きな期待もできません。そうなれば如何に節約して家計を回して、老後のための貯蓄を増やすのかが鍵です。
そのためにはまず現状の家計を見直すことです。そして節約効果の高い変動費の項目を徹底的に洗い出し、年収や自分の目的に見合わない無駄な支出を見つけ出して削除、あるいは削減することです。
今回の記事が家計を見直そうと考えている人たちに、少しでも参考になれたなら嬉しいです。