住宅ローンの支払いは長期にわたります。住宅ローンを支払っている人であれば、残りを一括返済して支払いを終わらせようと一度は考えた事があるのではないでしょうか。
返済を済ませてしまえばその後毎月の支払いにおびえる必要がなくなるので気持ちの面ではかなり楽になるでしょう。ただし返済のタイミングによっては余計に支払ってしまう可能性もあります。
住宅ローンの支払いには様々な手数料や利息、補助金が絡んでくるので一概に残りを一括で払うのが一番安くなるわけではありません。ではどんな支払い方法が一番得なのでしょうか。
今回は住宅ローンの一括返済に関するメリット、デメリットを紹介したうえでどのタイミングで一括返済を行えばいいか解説していきます。
残りのローンを一括返済したいがトータルで損はしたくないという方はぜひ参考にしてください。
住宅ローンを一括返済するメリット
ローンを一括返済することのメリットとして大きなものが二つあり、将来の金利が無くなることと、保証金が返還されることが挙げられます。
まず金利についてですが、そもそもローンとはクレジットカードの分割払いのようなものです。当然長期的に分割すれば利息も高くなっていくので、払う期間が長いほど合計の支払額も大きくなります。
その点一括返済を行った段階でそれ以降にかかる予定だった金利はなくなります。ですから残りの住宅ローンを全額返済する事で繰上返済よりも金利にかけるお金が少なくて済むのです。
続いて保証金についてですが、住宅ローンを組む際には必ず保証料を支払います。この保証金は一括返済を行った段階で残りのローンや期間に応じて返還されるのです。
返還される金額は金融機関や保証会社によって違いますが、一括返済が早ければ早いほど戻ってくる保証金も大きくなるのでより総合的にはより少ない支払いで済むようになります。
これらが住宅ローンを一括で全額返済するメリットです。これだけ見ると一括返済の方が断然お得のように感じますが、一括返済にもいくつかのデメリットがあります。
住宅ローンを一括返済するデメリット
一括返済をする上で注意しなければいけないデメリットが3つあります。それは住宅ローン減税を受け取れなくなる事と、一括返済の手数料がかかる事、そして団体信用生命の補償もなくなる事です。
・住宅ローン減税が受けられない
10年間にわたりローン残高の1%が戻ってくるのが住宅ローン減税です。この減税が適用されている10年以内に一括返済を行った場合返金がなくなってしまうのです。
・一括返済の手数料
一括返済することで利息はなくなりますが、同時に手数料が発生します。金額としては数万円程度ですが、残りのローンが少ない場合には利息より高くつく場合もあるので計算してから支払うようにしましょう。
・団体信用生命の補償がなくなる
この保険は住宅ローンを借りると同時に加入します。内容は支払いの途中で事故や病気などで支払いが出来なくなったとしても残りのローンを保険で支払ってくれるというものです。
ですが一括返済を終えた段階でこれらの補償は終了します。万が一一括返済直後に
これらの事故があった場合何の補償も受けられなくなるので、貯蓄を使い切ってまでの一括返済はリスクが高いのです。
一見メリットだらけの一括返済ですがこれらのデメリットも抱えています。では現実的にどの段階で一括返済を行うのが一番お得なのでしょうか。
住宅ローンを一括返済するタイミングとは
一括返済のタイミングとしては以下のようなタイミングが有効です。
・住宅ローン減税を受け取り切った後
住宅ローン減税の受け取りは10年にわたって行われます。これを全て受け取ってから一括返済をすることで、減税分の返金を全て受け取りつつ今後の金利を抑えることができます。
・一括返済をしても貯蓄が十分に残る
上記で述べたように一括返済後は保険による補償が受けられなくなるので、一括返済は返済をしても十分貯金が残るタイミングで行うべきです。事前に新しい保険を利用するというのも有効です。
・比較的お金のかからない時期に返済する
例えば子供が成長し手がかからなくなってくると必要なお金も減ります。そのような出費が穏やかなタイミングを狙って一括返済するというのも有効です。
これらのタイミングでは比較的低リスクでローン全額返済を行えます。とはいえ一度に対象のお金を使うのには変わりません。一括返済が可能でもしない方がいいという場面ももちろんあります。
こんな時は住宅ローンを一括返済しない方がいい
以下のような状態の時は、例え一括返済が出来る場面だとしてもリスクが高いので控えたほうが無難です。
・ローンの金利より手数料の方が高い
一括払いのメリットは、言ってしまえばトータルで支払うお金が少なる鳴る事だけです。ですからある程度ローンを払い終えていて手数料の方が高くつく場合にはそのままローン払いを続行したほうが賢明です。
・代わりの保険を見つけていない
一括返済直後は貯蓄が少なくなる上に保険までなくなるのでかなりリスクが高い状態です。せめて代わりに利用する保険を見つけてから一括返済を行いようにして下さい。
・近々大きな出費が控えている
子どもが学校に行くようになる時などは継続的に大きな出費が発生します。それらが間近に控えているときは大きく貯蓄を減らしてしまうのは避けたほうがいいでしょう。
払うお金は最小限にしたいですが、支払った後の事を考えリスクの高いタイミングでの一括返済は避けましょう。
最後に、それらを十分に検討したうえで一括返済を行った方のために、一括返済を終えた際の手続きを紹介しておきます。
住宅ローンを一括返済した際の手続きについて
一括返済を終えて住宅ローンを完済した後、これらの手続きを行う必要があります。
・全額繰上返済の手続き
これがいわゆる一括返済をするための手続きです。これによって今後の支払いに掛かる利息を減らすことができるのです。
・抵当権の抹消のための手続き
抵当権とは万が一支払えなかった場合に担保とする権利です。支払いを完済した以上この家は完全にあなたのものになるので、必ず金融機関で手続きを完了してください。
・火災保険の質権消滅のための手続き
ローンの完済によって住宅ローンとともに組んだ火災保険の質権も終了します。今後は新しく保険に加入したほうがよいので忘れずに手続きを済ませてください。
特に二つ目の抵当権の抹消は必ず行わなければいけない手続きなので確実にこなしてください。これさえ終わればその家は名実ともにあなたの所有する家となります。
まとめ
住宅ローンの一括払いには金利を抑えたり保証金が帰ってきたりと金銭面でのメリットが多いです。しかし保険が終了したり手持ちの貯蓄が大きく減ったりとリスクを抱えるデメリットもあります。
返済を終えてしまえば気が楽になるので少し無理をしてでも返済しきってしまう方も多いですが、トータルすると分割したほうが安い場面もありますし、支払った後のリスクも考えなければいけません。
今回紹介したような支払いタイミングと自身の生活環境を照らし合わせ、十分現実的と判断できた場面で初めて一括返済を行うとよいです。そうすれば余計なリスクを背負う心配もなくなるでしょう。